虹の書斎

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ウィンブルドンはフェデラー優勝


ウィンブルドン、男子シングルス決勝。

 

大会を通じて1セットも落とすことなく勝利してきた、老練の芝の王者ロジャー・フェデラーと、

錦織圭選手に勝利したあの全米以来、久々の四大大会の決勝進出であり、

ウィンブルドンにおいては初めて決勝まで勝ち上がったマリン・チリッチ

タイプは異なるけれども、ともに高いサーブ力を誇る2人、

サービスキープが連なる展開になるのだろうか?

第3シードと第7シードによる決勝となった。

 

 

どちらの選手も序盤は緊張していたようで、

40-40にもつれ込む展開の中にどこかぎこちなさがうかがえ、フォルトも多かったが、

チリッチはフォアハンドのショットが効いていて、

ややフェデラーの方が押し込まれていた。

それでも双方サービスキープをしていくと、

時間とともに試合が落ち着き始めた。

 

ただサーブの名手チリッチのファーストの入りがひどく悪い、緊張のためなのか?

徐々にリズムが整ってきたフェデラーの精度が、いつものように高まっていく。

チリッチが苦手とするバック側へ返球を集め、

最後フォアへと早い打点から打ち込むパターンがはまり出す。

フェデラーのなめらかな動き。

サーブが依然として入らないチリッチ。

フェデラーはチリッチの心の中を読みきっているかのように、自在にテニスを展開し始め、

徐々にチリッチはミスが重なり始め、

表情が泣き顔のように悲痛になっていく。

 

 

2セット目の3ゲームが終了した後のベンチ、

タオルをかぶり涙を流しているチリッチ。

椅子から立ち上がれない。

何が起こったのだろうか?

その後3セット目に入る際にメディカルタイムアウトを取って、

左足裏の豆に対する処置を施すところが映し出されていたが、

その痛みのせいの涙だったのか…?

  

サーブが入らない。思い通りにいかずミスが重なる。

フェデラーはエンジンがかかり出し、いつものように自由自在になってきている。

どうしよう、何とかしなくては…という焦り。

チリッチほどの選手でも、

ウィンブルドンの決勝の舞台となるとこれほど追い込まれるものなのかと、

観ていて感じられるほど、1セット目の終盤あたりからはいっぱいいっぱいな感じで、

泣きそうな表情をしているようにさえ見えた。

 

最後ダブルフォルトで第1セットを失った後、ベンチにラケットを叩きつけ、

うな垂れるように座ったチリッチ。

そして2セット目、いきなり3ゲームを連取された後に、

あのタオル越しに嗚咽するほど涙する姿へと至った。

ウィンブルドン決勝への意気込みと自身のプレーがうまくかみ合わず、

精神的にあまりに追い込まれてしまって心が溢れてしまったのだろうかと、

個人的に、その時までの試合の流れの印象とともに、そのようにチリッチの涙を受け止めていた。

 

実際のところ、チリッチはそれまでの試合中、

足を痛めているようなそぶりは見せなかったと思うが、

豆の痛みを抱えながらの、そのような流れだったのだとしたら、

痛みのせいでうまく左足に重心がかけられない、体重を乗せられない苦しさや、

決勝の舞台で力がうまく出せない辛さなどがない交ぜとなって、

あの必死の形相を生み、

そしてこらえきれない思いが涙となって溢れてしまったのかもしれない。

サーブが不自然なほど入らなかったのも、足の痛みと無関係ではなかったのだろう。

 

 

フェデラーの心の中は推し量れないが、

表向きは何も変わらずに自分のペースを貫き、

2セット目も6−1で連取した。

チリッチは自分を鼓舞し、何とか気力を振り絞り、

果敢にネットに出て、フェデラーに挑んでいた。

3セット目になると、

観衆もずいぶんとチリッチを応援する声が増していたようだ。

 

しかし、ここぞというところで、

流れに関係なくベストのサーブとショットを繰り出し、

たった1打で局面を決定させるフェデラー

最後まで、チリッチに主導権を譲ることはなかった。

結果は6-3,6-1,6-4のストレートでフェデラー勝利し、

大会を通じて1セットも落とすことなく、

男子シングルスにおける、ウィンブルドン歴代単独トップとなる、

8度目の優勝を果たした。

 


芸術作品のように美しく、しなやかに舞踊するかのように軽やかなフォーム。

 

ギクシャクと角張ったところがまるでない、流麗かつスムーズな動きとそのつながり。

 

極めて早い打点からどこにでも打ち分けられる、緩急強弱前後左右自在のショットメイク。

 

どの局面からでも瞬時に仕掛けられる世界最高レベルのネットプレー。

 

試合の流れに左右されることなく、異常に高い精度でピンポイントに決められるサーブ。

 

対戦相手の目論見を読み解き、また相手からの読みには未然に察知してかわしていく洞察力。

 

ほとんどオールマイティと言えるほどの数多い手札を、適材適所で使いこなす判断力と自在性。

 

窮地に見える場面でも決して破綻しないテニスと、破綻させない強靭で堅固な勝者の精神力…

 

体力やスタミナの点では、絶対的に若手選手には敵わないところを、

豊かな経験や智慧を支えにして揺るぎないメンタリティと、

サーブ、ストローク、ボレー、ロブ…高性能で多彩な武器を駆使することで、

フェデラーは高い年齢ゆえの弱点を帳消しにし、

さらに補って余りあるものへと見事に昇華させていた。

正直なところ、芝のフェデラーはまるで仙人や魔術師のよう…

自在の境地にいて、1人だけ明らかに次元が違っていた。

 


昨年のウィンブルドン準決勝で、

ラオニッチと戦った際にコート上で倒れ込んだフェデラーの姿。

その試合に敗れた後、ツアーから離れることになった。

史上最高とも言われるプレーを、再びコート上でみることはできるのか?

そもそも復活自体、可能なのだろうか?

期待感と不安、諦めの混ざった寂しさのようなものを感じながらも、

とにかく健康が戻るようにと願っていた。

 

年初のオーストラリアの衝撃の復活や、

インディアンウェルズ、マイアミと立て続けに優勝を果たして世界を驚かせ、

歓喜をもたらして。

クレーシーズンを休んだ後、芝の前哨戦のハレでも優勝し、

そしてまさか、このような磐石な形で、

ウィンブルドンのシングルス決勝センターコートに戻ってきてくれるとは、

昨年の今頃からは、正直かけらも想像できなかった。

 

 

今回のウィンブルドンの期間中ずっと、

フェデラーのプレーを観られる喜びをヒシヒシと感じ、

ほとんど感謝の気持ちさえ抱いて、試合を観ていた。

不思議なほど勝負そのものへのこだわりも湧いてこないまま、

ただただずっと、夢のように素晴らしい芝の王者のテニスを、

ひたすらかみしめながら観戦した。

観戦させて頂いた…の方が気持ち的には近いくらいだったかもしれない。

 

まもなく36歳を迎える、偉大なるテニスプレイヤー、ロジャー・フェデラー

ウィンブルドン8度目!となる優勝への祝福と、たゆまぬ努力への敬意と、

そして崇高なアートのような唯一無二のテニスをまたこうして見せてくれたことへの感謝を、

心から、捧げたい。

 

 

馨公