虹の書斎

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赤土の王、ナダル

 

全力を尽くして、何とかしようと試みていたワウリンカが、

結局、何もさせてもらえなかった。

素晴らしいショットを何本も放ち、いいプレーも見せ、

途中心折れそうな素振りを見せつつも、

必死に試合との繋がりを保とうと、チャンスを創出しようと、

踏ん張っていた。

けれど最後まで、突破口を見出すことはできなかった。

 

ワウリンカの力をもってしても、

打開の気配すら微塵も感じられぬまま進みゆく試合の流れは、

初戦から最後の決勝まで、

大会を通してずっと変わることのなかった流れでもあった。

誰にも作用されない異次元の強さを見せつけ続けた、

赤土の王ナダルによる「ラ・デシマ」の達成。

今年の全仏は、

圧倒的な強さでラファエル・ナダルが優勝した。

今まで四大大会で成し遂げた者のいない、

同一大会における10度目の優勝となった。

 

 

ネコ科の獣のように、しなやかでタフな筋肉とバネが生み出す、

メリハリの効いた俊敏な動きと躍動。

 

太いトルクに支えられてムラのない高速のテンポと、

その持続をやすやすと実現させるスタミナ。

 

終始迷いがなくて、ミスが極端に少ない、

強烈なスピンが効いて重そうだった力強いストローク

 

感性のきらめきや直感的な反応が随所で冴え渡り、

隙のないプレーの精度は高まるばかり…という、

どうにも良い所しか思い出せないような、

目をみはる内容を繰り広げたナダル

 

 

とりわけ全仏決勝の舞台で、

ワウリンカを相手に一貫して太く濃く定まっていたナダルの集中力は、

「凝結しきっている」という印象で、

そこから生み出される試合を掌握する力にも、

ほんの些細な揺らぎさえ生じさせない!という、

確たる決意のようなものが感じられた。

際立って濁りのない闘志と迫力、

赤土の王者が示す、輝くような戦う者のメンタリティがそこにはあった。

 

メンタルの力が行き着くと、

その影響力というのは、ここまで肉体次元やプレーにも、

そして相手にも及ぶものなのか。

克己心の為せる技なのだろうが、

他のどの選手よりも心が堅く統制されていて、

揺れない揺らさないホールド感、安定感のみなぎりが半端ではなく、

また集中が切れてしまうことももちろんなく。

目に見えないはずのナダルのそのメンタルの圧力に押されて、

相手プレイヤー達の心がおののいているようにさえ見えた。

 

 

プロテニスプレイヤーとして、

そしてアスリートとしてのナダルの見事さ。

磨き抜かれたメンタル力のその強靱ぶり。

史上最強の赤土の王は全仏のコートにおいて、

真剣で、ひたむきで、謙虚で、全力で、

胸を打つ「いつも通りの」真摯な姿を見せてくれた。

 

ただしその戦う意志、心身体調万全の時の実力は、

さらなる高みへとバージョンアップされていて、

百戦錬磨の世界上位の選手でさえ、どうすることもできないところにまで、

もはや到達しているかのようだった。

 

赤土のナダルは、本当に強過ぎる。

それがとにかくはっきりと刻み込まれたクレーシーズン、

そして全仏であった。

 

 

馨公