虹の書斎

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メンズ・セルフエステ 1

 

以前、勤めていた化粧品関連の会社で、

男性のための簡単なセルフ・フェイシャルケア講習、

つまり自分の肌を自分自身でケアしてもらうための実技講習を、

実施したことがあった。

 

その講習参加者のほとんどは、

髭剃り後にアフターシェーブローションを使用するくらい、

もしくは、普段から何もケアらしきことはしていないという、

肌知識も基礎化粧品知識も、実技をしたことも施術を受けたこともない、

40代中心の、典型的な日本のお父さん達。

 

その現場にいることに気恥ずかしさを感じている人。

所属する会社の命を受けての参加だから…とあえてクールに振る舞う人。

男にはどうなんですかねぇ…

と周りに話しかけて、不安を解こうとする人。

 

自分の顔を卓上ミラーで見つめながら、自ら人前でフェイシャルケアをする…?

 

まるで関係ないと思ってきた肌ケアなるものと、仕事とはいえ、こんな形で向き合うことになるとは…

 

この目の前に置かれているコットンや小さい容器も「自分が」使うんだよなぁ…

 

表し方はそれぞれに違っていても、

未知のことへの緊張を滲ませつつ、

ため息混じりの心の声が漏れ聞こえてきそうな面持ちで、

講習開始を待っていた。

皆、居心地が悪そうだった。

 


肌知識や化粧品のこと。

フェイシャルケアの工程や流れについて。

実技以前に理論の面においても、

ある程度分かっているところから学ぶ女性受講者とは異なり、

初心者の男性は全く手がかりがなく、まさにゼロからのスタートとなる。

 

内容を把握し、さらに興味を持ってもらうため、

そしてその後のスムーズな進行のためにも、

理論内容やその理屈、背景や歴史などの知識を、

頭、言葉で短時間のうちに理解してもらう必要がある。

知識を得て分かった状態になれば、

「知」そのものが前向きに取り組むモチベーションともなるし、

又、拠り所ともなってくれる。

不得手なことに挑もうとしている参加者達、

やや引き気味の企業人兼お父さん達を、

前のめりにし飽きさせないこと。

講習会の成功は座学にかかっていた。

 

ところで。

一般的に見て、中高年男性にとっての肌ケアは、

自分たちとは関係ない壁の向こう側のもの、女性の世界のもの、

というような意識がある。

特に高齢だったり、生まれ育った地域の風土習慣によって、

「美と男は相容れない」

「男たるもの」

の教えで育ってきたような、

「美」は男性性を毀損すると考える世代の男性には、

肌ケアとか保湿・保護クリーム、化粧水というようなワード自体が、

羞恥心やおののきを感じさせたり、

心理的な抵抗感を煽る一因となる。

 

「美ではなくて整」

「肌を整えることは美容というより健康につながる」

「エステではなく、男性の場合はエチケットの枠組みで」

のように、

男性が「理性的に」肯定しやすく、受け止めやすい概念を用いたり、

言葉を言い換えたり工夫することで、

肌やケアに対する、未知であるが故の不安や思い込みを取り除いていく。

女性の講習では、そのような作業を理論講習において、

同時進行で加えていくことはしない。

それは対男性、特に対中高年ならではの方策であった。

 

2に続く

 


馨公