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虹の書斎

花散策文や詩、音楽やスポーツ、健康や時事関連等心の赴くままに記しています。

アメリカの分裂と混沌

時事

トランプ大統領が選挙期間中から掲げていた政策内容。

その実現への移行の仕方があまりに唐突で急激であるために、

リベラル派や既存の体制支持者の人々には、

感情的心理的な非常事態が発生しているように見える。

動転・動揺したショックからいまだ抜け出せておらず、

過去と未来が、許容範囲を超える段差で乖離している現実に直面し、

アジャストが進まぬまま苦しんでいる2分の1のアメリカ。

脱皮や羽化の流れにうまく乗ることができていない。

 

真っ二つに分裂している、それぞれの信条・心情に基づく集団心理の塊。

2つの巨大な渦巻きとなって国全体に吹き荒れ嵐を起こしているが、

全く弱まる気配も融和する兆候も見出せないでいる。

大統領令発布と署名、

中東アフリカ地域7カ国の出身者及び難民の一時入国禁止措置と、司法を巻き込んでの大統領令の一時的執行停止。

大統領の発言や姿勢、閣僚の発言やその人選。

そして大手メディアと大統領との加熱する諍いや、大統領支持派の地方メディア優遇対応など。

日に日に溝は深まり、広がり続けている。

 

あくまで映像を通してしか推し量れないが、

守らなければならない闘わなければならないという、

それぞれの人の母国アメリカを想う強い気持ちが鮮烈に伝わってくる。

けれども、まるでスズメバチの巣を意図的に突いて不用意に刺激してしまったことで、

驚いて身の危険を感じるセンサーがオンになったスズメバチ達が、

一斉に巣を飛び出して攻撃する…

そんな姿にも重なるような人々の様相からは、

愛国心よりもさらに色濃く、逼迫感や戦慄・恐怖心が伝わってくる。

 

それぞれの巣をめがけて攻撃をしかけ過剰に傷つけ合う、

信じるものが異なる2つのスズメバチの大集団の如きエネルギーが、

お互いを余計に過敏状態へと煽っていく負の連鎖。

オーバードライブに歯止めが効かなくなりはしないだろうか。

攻撃本能に飲み込まれて、又は過度に防衛本能が作動して、

暴走するうちに根本を見失い、逸脱してしまわないだろうか。

このままでは事態はより複雑で深刻な状況へと陥るのみと思われ、

否が応でも不安や懸念が増してくる。

 

例えばアレルギー反応を起こして発疹の出ている皮膚や、熱いものに触れて真っ赤に腫れ上がった皮膚には、

その炎症・熱をとにかくまずは冷やし静め、

肌を落ち着かせることが最も重要な応急処置となる。

細胞組織の破壊を最小限に抑えるためであり、

再生を促し、深刻な傷や痕を残さないためでもある。

 

この例えが完全に当てはまるわけではないにしても、

トランプ大統領を肯定する側も反対する側も、このまま傷の付け合いを継続するのでは、

どちらもがアメリカの半身である以上、

その傷のどれかがアメリカそのものの致命傷となってしまうかもしれない。

怒りや不満、憎しみや悲しみ故に実相が見えなくなっているそのような双方の感情的現状を、

まずは静めていくことが必須かつ不可欠なことなのではないか。

国民感情を煽るベクトルを維持し、

処置を軽視して先送りするのは危うさが膨らむばかりで、

むしろそれは悲劇を生む素地となるように思える。

 


自国を守るためという正当な理由からではあるけれども、

世界が、人類として、守ろう守っていこうと何とか努めて積み上げてきた人道意識に、

直接介入をしてしまった格好の大統領令。

その禁断の図式により、

世界各国と民衆からの爆発的な反発や非難を受けているトランプ大統領だが、

当事国アメリカの国民の半数は、その施策を冷静に静観している。

一時的なものであり、間違いではない…

そこまでヒステリックになることではない…

と、この件に関しては一定の評価を大統領に与えている。

 

今回の大統領令署名や発言の後、

憲法に抵触しているのではないかという声がサンフランシスコから、

そしてワシントン州連邦地裁から上がったが、

選挙キャンペーン中から、トランプ大統領の言動と行いには、

アメリカ合衆国が建国以来約250年近くかけて作り上げてきた、

アメリカという鋳型、パラダイムそのものに挑戦・挑発するような質が含まれていた。

その後の司法への、いつも通りとも言える大統領の悪態や物言いには、

まさにアメリカの根幹、背骨である三権分立をも意に介さない姿勢が見てとれる。

 

トランプ大統領の言行に対してのコメントを求められ、

マイクを向けられたアメリカ人達の何人かが、

「アメリカらしくない」

という言い方をしていた。

又そう書かれたプラカードをもつ人々も見る。

アメリカらしさ…

激しいデモやシュプレヒコールをする人々、

新政権に向かって「アメリカらしくない」と訴える反対派の人々は、

建国以来培ってきたアメリカのルールやシステムが通用しないアメリカの誕生、

トランプ大統領のアメリカは自分達のアメリカではないと、

国の存亡の危機の次元で現在を危惧して、叫んでいるのだろうか。

 

今までとこれから、その境目。

アメリカ合衆国という巨大で強大な、実はとても若い国のトランスフォーム、

いよいよ本格的に始まったということなのかもしれない。

それとも一時の右往左往であり、落ち着くべきところにしっかり着地していくのだろうか。

どちらにせよ、その一挙手一投足を世界は巻き込まれながら固唾を飲んで見つめ、

関わり方を模索しながらも、関わり続けていくことになる。

今年はヨーロッパでも同様のうねりが巻き起こる可能性があり、

そうなると従来の慣れ親しんだ欧米世界の形は失われることになっていくのだろう。

 

どの国であってもどの地域であっても、

それぞれの国民の総意に基づく上で平和な形を取ってほしい…

今のアメリカの分裂と混沌が、

今までとこれからという、時代そのものの分け目にならなければ良いのだが。

そうでないことを願うばかりである。

 

 

馨公