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虹の書斎

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秋の夜長に、ちあきなおみの歌

心に伝わるうちに歌声がほどけて、

胸の奥へと滲みるように吸い込まれていく。

本当に、なんて上手いのだろう…

ヘッドフォンでじっくりと味わう至福に、

ポツリ、感嘆の言葉がこぼれでる。

数えきれないほど聴いてもなお、

極上の質で織りなされる歌唱がもたらす感動は、

摩耗することがない。

 

日本音楽シーン史のなかでも随一の歌唱力で、

独自の道を歩んだ孤高の歌手、ちあきなおみ

20数年前から公に現れなくなった今もこうして、

大人のファンを歌一本で魅了し続ける。

そんな、伝説の歌うたい。

 

 

美しさ、可愛らしさ、やさしさ、微笑み、

情念、激しさ、怖さ、狂気、

傷、悲哀、慟哭、絶望、

色気、気品、柔らかさ、いたわり…

 

酸いも甘いもすべて知り抜いた女の心やその凄みを、

時にゾッとさせるほどの迫力や、

穏やかにつつみこむ母性に託して。

 

柔らかな余裕を携えて力みのない、そのなめらかな歌声は、

とても静かに、そしてドラマティックに、

闇や慟哭、あらゆる喜怒哀楽を生み落とし、

圧巻の存在感と表現力で術のように、

聴き手を虜にしていく。

 

ほとんど動かぬ姿勢のまま、

まっすぐ前だけを見つめて歌う姿がなつかしい。

プロ歌手としての強靭な意志を凜とした佇まいに感じさせて、

歌に臨んでいた。

 

ムード歌謡、演歌、民謡、ファド、シャンソン、ジャズ、ポップス、カバー曲…

ジャンルのへだてをものともせず、聴かせる歌のレパートリー。

その中でも、

玄妙な香気がたゆたい揺れるような、

郷愁の光が思わず目を細めさせるような、

バラードは絶品である。

 

時代を越え、音楽のジャンルという垣根を越え、

囁き呟くようにして、脅し迫るようにして、

生身に触れてくるちあきなおみの歌と歌声。

これからも、目立つことはなくとも、

ひとりひとりの心へと運ばれ、

ひとりひとりの心の中でひっそりと、

大事にされながら生き続けていくのだろう。

 

「霧笛」「黄昏のビギン」「ほおずきの町」「紅い花」

秋の月夜に馴染むなぁ…

昭和がひとときよみがえり、しみじみと浸る。

 

敬称略

 


よしたか