読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

虹の書斎

花散策文や詩、音楽やスポーツ、健康や時事関連等心の赴くままに記しています。

栗の木

 

栗の花から放たれる、

密度があってこもるような、

どこか蒸して発酵してるかのような、

独特のにおいが、辺りに漂っている。

 

近くに栗の木の樹園というか、植林されているところがあるから、

近所を歩いていても、

部屋の窓を開けていても、

この時期はどことなく常に、

空気に栗の花のにおいが混じっている。

 

香りと呼ぶような優しい質感のものではなく、

個人的には不快ではないが、

とても生殖を感じさせるような、

「強」というよりは「濃」なにおい。

そのウェットにまとわりつく、やや隠微さがある臭味は、

梅雨の前の、一つの季節的なマークになっている。

 

何らかの個体の強さを「肉食」という表現で表すふしがあるが、

この栗の花の、においの濃さと盛大な様相を思うと、

個体ごとに限られる肉食動物よりも、

辺り構わず、広い圏へ支配を及ぼす、

植物の政治力のようなもの、というのだろうか。

虫や鳥を引き寄せるために、

生存のために発揮する植物の力は、

むしろずっとしたたかで、強いように感じられる。

 

栗の花は、例えが悪いが、

パッと見が大きな毛虫の集まりようだ。

猫じゃらしよりは大きい、幾本ものふさが、

ブワァーと葉っぱに覆いかぶさるように、

何本ものふさが枝のようになって咲く。

 

光の飛沫が葉の上で飛び散っているような、

光の粒が胞子のように、濃い緑の葉の上に、

積もり乗ったような様子で、

黄色というか淡いゴールドに満開になる。

 

その花姿を見たことのない人には、

ちょっと驚くような生命力の噴出感を、

感じさせるものかもしれない。

 

生命エネルギーのすごい埋蔵量というか、

これでもかというくらいに咲くその姿は、

ちょっと怖いくらいに凄まじいものがある。

正直近くでの見た目には、やや気持ちの悪い感じが否めず、

そういう意味でも圧倒させられる。


問答無用で、辺りに猛烈なにおいを発散し、

小さな光の粒の積み重なりのように、

花が猛烈な量で一斉に咲き、

そしてそのうちに、ひどく堅固なトゲトゲをもち、

その中で、また硬い殻をもつ実をつける栗。

 

このにおい、降り積もる光のような花…

毎年この時期になると、

やっぱり栗という植物の、

こうしたユニークな生命の形や、携えているエネルギーの量、

その存在の具合や佇まいに、改めて驚かされる。

 

あの栗の実をつける生き物なのだ、と実感させるというか。

まざまざと、そんな生命の力を見せつけられるというか。

納得!という感じになる。

力強い凝結。

誠に頼もしい「栗」なのだ。

 

f:id:umenokiyoshitaka:20160529010918j:plain

f:id:umenokiyoshitaka:20160529011013j:plain


よしたか