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虹の書斎

花散策文や詩、音楽やスポーツ、健康や時事関連等心の赴くままに記しています。

暁紅の梅

景色の中に、濃紅色の梅を見つけると、

ドキッとする。

予期していない…無いはずに思える色が、

突然そこに現れたようで。

一瞬頭の中が錯覚したように、少し戸惑う。

 

…なんて色をしているのだろう。

鮮やかでコクのある、かすかに黒みを含むマゼンタ。

近付いて見ると、

花びら一つ一つのピンクが、フーシャのように際立つ。

眩しさにも似た感覚に捕らえられて、

思わず、目を細めてしまう。

 

紅梅の背景や周りには、

濃紺に似た深い青色が在るような気がして、

木や花々の輪郭を縁取り、

そして覆っているようにも見えてくる。

そういう生命の奥行きが、

花の濃い色味を育んでいるのかもしれない。

 

艶やかで愛らしく、

華やぎがあり可憐でもある、

その稀有な花姿。

 

胸を煽り、掻き立て、

締めつけるような、

たまらなく芳しい香り。

 

麗しい紅梅。

 

遠目からでも目を引く、その濃厚な花弁の色。

春にそぐわない印象のある、闇を孕むマゼンタの顕現は、

自然界の隠された仕組みの綾を、感じさせる。

 

どこか切ない気配が漂う、

存在に滲む儚い雰囲気は、何故なのだろう。

実在感は堅固なのに、現実感が不思議に淡くて、

見ていると、何だか当て所ない気持ちにさせられる。

 

 

香りを讃え、存在を愛で、心で向き合いながら、

謎を秘めて、近づきがたい、黎明の濃紅。

 

冬の終わりと春を知らせる、祝福の鐘の音のように、

夜明け前の世界から、こちらに向かって咲くことで、

この世の夜明けを知ろしめす紅梅。

あちらとこちら、冬と春の境界を担う、

暁の花梅。

 

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よしたか