虹の書斎

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冬と春一番

 

梅が咲き始めた。

木々や草花からは新芽がチラホラと萌え出で、

生命の脈動が、その弾みを増しているのがあちこちから伝わってくる。

春の胎動に、自然界自体も高揚しているかのようだ。

 

寒暖の間を往き来しつつも、

全体で気温が上がり始める道ゆき。

肉体に流れる血も少しずつその勢いを増し、

固く張っていた防御姿勢は徐々にゆるんで、

和らぎの気配も満ちてくるだろう。

 

暖かな生命の息吹を感じさせる春。

その到来の予兆を、具体的に体感させる春一番は、

春に対しての目覚めを促す狼煙であり、召喚の号令でもある。

 

真冬となる一月後半から二月初旬。

冬勢力とその支配圏では、

断固とした冬たるものが凝結・結実し、

最盛期の強靭さで、バランスする。

堅い成熟を迎えるのだ。

 

2月中旬に入っても、その支配力は衰えることなく、

冷凍の寒風は依然として肌を刺し続ける。

…そんな真冬のある日、

様子を伺ってから近づくのでもなく、

じわじわと忍び寄るのでもなく、

突然、春一番は南から、

遠慮のかけらもない登場をする。

 

それは、最盛期に君臨する冬王朝に対して、

遠慮どころか、むしろ打倒を試み、

粉砕しようと真っ向から体当たりをする、

冬の退却を本気で企てる質のものだ。

 

 

今年、春一番は2/14のバレンタインデーに発生した。

 

夜中から激しく窓や外壁にドシンドシンとぶつかり、

建物を揺さぶった暴風雨も昼前にはすっかり晴れたが、

あの南国特有の暖かくて湿った、

生命を鼓舞するような匂いを帯びる強風は、

そのまま午後遅くまで地上を吹きぬけ続けた。

 

天気予報が伝えていた通り、

気温と湿度の高さは、まるで5月のような様相を呈し、

最高気温は25度にも迫る勢いとなった。

突然の汗ばむ陽気が、真冬のさなかに出現したのである。

 

高温多湿の猛烈な南風で冬の鋳型を溶かし、

冬勢力を骨格から、丸ごと雲散霧消させてしまう力。

春一番は、冬に対する正式な幕引きの要請であり、

宣告の、最初の通知という役目も担っているのだ。

 

一番で冬の度肝を抜き、その支配圏の譲渡を迫り、

二番三番とで冬王朝の淘汰を加速させて、

春の目覚めを促しつつ、冬の存続の芽を消し去っていく。

 

冬側から見る、その問答無用で容赦のない春の仕掛けには、

厳正で厳重な、遵守されるべき法の施行というような、

自然界の理(ことわり)による後ろ盾が見える。

 

それとも、外から見る印象とは異なり、

冬自身は、これでお役御免とホッと胸を撫で下ろして、

実は責任から解放されていく道すがら…にいるのだろうか。

 


冬と春の境目で吹く春一番は、

いわゆる初手、早い春の風物詩だ。

南風、寒の戻り、そして雨が降り…、

そのサイクルを続けながら、

徐々に春は育まれ、軌道にのるようになる。



そして春と冬の境目は、

他の季節とは違い断絶している。

拮抗する力と力を激しくぶつけ合うところから、

少しずつ融合と譲渡が為されて、

冬は北へと退いていくのだ。

 


春一番の暑いほどの暖かで湿った空気と、

風の暴威の強力さで、

終焉を冬に迫り、追い散らすそのやり方に、

今もどこか慣れない自分がいる。


 

訪れてくる春に思いを馳せながらも、

冬への郷愁を色濃く抱く気持ち。

冬と春との間で、理と情の板挟みを経験する、

毎年のひそかな、個人的春一番ウラ風物詩。

 

今年も真冬のさなかの暑さの中で、

終わりゆく冬を実感しながら、

季節の流転に思いを傾け、

なんだか、しみじみとした。



よしたか

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