虹の書斎

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梅林にて

 

目の前にほころぶ梅一輪一輪を愛で

美しさを讃えて

白くて小さなまるい花びらが

競うように重なり合い、蕾もたくさん

交錯する枝々に溢れんばかりに咲く

可憐で愛らしい梅の花たち

見上げると、満開の白に夕空の広がり

思わずため息が漏れた

 

光が彼方へと薄れ

別次元に沈みゆくシンと冷えだした場に

ほのかに漂う馥郁たる香りが

なんて優しいのだろう

しっかりと地に根付いて佇む

芯の定まった梅の木々たちの

根元から立ちこめる幽かで安らかな静謐が

梅林を支えていた

 

雪の降るような厳しい環境にもひるまず

蕾をつけ花開いて、春を告げる梅

冬の間に縮こまって強張る自然を

ふわりと和らげるのは

精妙で清らかなアルペジオのような

白梅が奏でる生命の響き

暗くなった戻りの道

その典雅な調べが、冬をそっと解いていた

 

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馨公

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境目の海

 

この世の己れをしばし離れて

空想の波間に浮かび行きつ戻りつ

あれこれと思い描いてはパシャパシャと打ち消して

境目の海を満喫した昼下がり

 

波打ち際の方から聞こえてくる

僕の名を呼ぶ馴染みの声には応えない

亜空の浅瀬で水にたゆたいながら

当て所なく生れ出る泡の姿をただ愉しんだ

 

まどろみに似た乳白色の凪と紫紺に向かう沖の空

時折り寄せる波が水面を揺らすと

任せている身があちらへこちらへゆらり移ろい

その度に、そういえば…と心もつられて翻る

 

イメージと戯れるための海に憩う

また不意に訪れることもあるだろうか

磯辺の岩に登り海岸に別れを告げようとした刹那

重力ある此岸へと架かる、透明な橋を渡った

 


馨公

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強風の梅

春らしい陽気の日がポツリポツリ。

水気を含んだ生温かい強風の日も増えてきて、

シベリア由来の真冬の寒気と、

南海から運びこまれる春近しの便りが、

交互に入り組むように訪れ始めている。

猛烈な雪模様を伝えるニュースはそろそろなりを潜め、

スギ花粉の飛散量に耳目が集まる日々へと、このまま移行するのだろうか。

今日はいわゆる春二番の猛烈な風から降雨へと進む、

荒れた天候だった。

 

2月も後半に入り、少しずつ季節が動き出している。

紅白の梅がたくさんの蕾をつけて、

日当たりの良い辺りでは可憐な花がすでに豊かに咲いており、

あと少しで満開を迎えそうだ。

近所の農地や樹園には白梅が多く植えられているため、

遠目から見ると、白い雪を枝々にふんわりと纏うようで、

素敵な風情がある。

 

穏やかな微笑みのように静かな佇まいで、

典雅で品のあるゆとり、清らかで微かな涼やかさのある香りを漂わせて、

落ち着いた雰囲気を場にもたらしている白梅の木々。

 

激しい強風が昼のあいだずっと吹き続け、

建物を揺らしては、びゅうびゅう轟々と暴風の音をなり響かせていた中、

梅の花の香りが窓から入り込む空気に乗って、

部屋にまで届けられた。

静かな質感とそのほのかな優しさを、

離れたところから分け与えてくれているみたいだ…

荒々しい強風の渦の内側で梅の芳香に包まれた、

意外なうれしさの1日となった。

 

 

馨公

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テントウムシ

胸の内側が破けて、命が漏れて

倒れこんだまま、力が入らず起き上がれない日

 

呆然と街中で立ち尽くし無言で玄関にへたり込んで

心を失い動けぬままだった夜

 

斬りつけられた傷の痛みより

愛によく似た嘘の言葉がやけにこたえる…

 

無駄なことなどない切り替えよう、と己れを諭し

因果に問いかけながら叱咤して立ち上がった

 

テントウムシが窓辺に現れた冬の午後

ちいさく歩く幸運の使者が救いだった

 


馨公

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アメリカの分裂と混沌

トランプ大統領が選挙期間中から掲げていた政策内容。

その実現への移行の仕方があまりに唐突で急激であるために、

リベラル派や既存の体制支持者の人々には、

感情的心理的な非常事態が発生しているように見える。

動転・動揺したショックからいまだ抜け出せておらず、

過去と未来が、許容範囲を超える段差で乖離している現実に直面し、

アジャストが進まぬまま苦しんでいる2分の1のアメリカ。

脱皮や羽化の流れにうまく乗ることができていない。

 

真っ二つに分裂している、それぞれの信条・心情に基づく集団心理の塊。

2つの巨大な渦巻きとなって国全体に吹き荒れ嵐を起こしているが、

全く弱まる気配も融和する兆候も見出せないでいる。

大統領令発布と署名、

中東アフリカ地域7カ国の出身者及び難民の一時入国禁止措置と、司法を巻き込んでの大統領令の一時的執行停止。

大統領の発言や姿勢、閣僚の発言やその人選。

そして大手メディアと大統領との加熱する諍いや、大統領支持派の地方メディア優遇対応など。

日に日に溝は深まり、広がり続けている。

 

あくまで映像を通してしか推し量れないが、

守らなければならない闘わなければならないという、

それぞれの人の母国アメリカを想う強い気持ちが鮮烈に伝わってくる。

けれども、まるでスズメバチの巣を意図的に突いて不用意に刺激してしまったことで、

驚いて身の危険を感じるセンサーがオンになったスズメバチ達が、

一斉に巣を飛び出して攻撃する…

そんな姿にも重なるような人々の様相からは、

愛国心よりもさらに色濃く、逼迫感や戦慄・恐怖心が伝わってくる。

 

それぞれの巣をめがけて攻撃をしかけ過剰に傷つけ合う、

信じるものが異なる2つのスズメバチの大集団の如きエネルギーが、

お互いを余計に過敏状態へと煽っていく負の連鎖。

オーバードライブに歯止めが効かなくなりはしないだろうか。

攻撃本能に飲み込まれて、又は過度に防衛本能が作動して、

暴走するうちに根本を見失い、逸脱してしまわないだろうか。

このままでは事態はより複雑で深刻な状況へと陥るのみと思われ、

否が応でも不安や懸念が増してくる。

 

例えばアレルギー反応を起こして発疹の出ている皮膚や、熱いものに触れて真っ赤に腫れ上がった皮膚には、

その炎症・熱をとにかくまずは冷やし静め、

肌を落ち着かせることが最も重要な応急処置となる。

細胞組織の破壊を最小限に抑えるためであり、

再生を促し、深刻な傷や痕を残さないためでもある。

 

この例えが完全に当てはまるわけではないにしても、

トランプ大統領を肯定する側も反対する側も、このまま傷の付け合いを継続するのでは、

どちらもがアメリカの半身である以上、

その傷のどれかがアメリカそのものの致命傷となってしまうかもしれない。

怒りや不満、憎しみや悲しみ故に実相が見えなくなっているそのような双方の感情的現状を、

まずは静めていくことが必須かつ不可欠なことなのではないか。

国民感情を煽るベクトルを維持し、

処置を軽視して先送りするのは危うさが膨らむばかりで、

むしろそれは悲劇を生む素地となるように思える。

 


自国を守るためという正当な理由からではあるけれども、

世界が、人類として、守ろう守っていこうと何とか努めて積み上げてきた人道意識に、

直接介入をしてしまった格好の大統領令。

その禁断の図式により、

世界各国と民衆からの爆発的な反発や非難を受けているトランプ大統領だが、

当事国アメリカの国民の半数は、その施策を冷静に静観している。

一時的なものであり、間違いではない…

そこまでヒステリックになることではない…

と、この件に関しては一定の評価を大統領に与えている。

 

今回の大統領令署名や発言の後、

憲法に抵触しているのではないかという声がサンフランシスコから、

そしてワシントン州連邦地裁から上がったが、

選挙キャンペーン中から、トランプ大統領の言動と行いには、

アメリカ合衆国が建国以来約250年近くかけて作り上げてきた、

アメリカという鋳型、パラダイムそのものに挑戦・挑発するような質が含まれていた。

その後の司法への、いつも通りとも言える大統領の悪態や物言いには、

まさにアメリカの根幹、背骨である三権分立をも意に介さない姿勢が見てとれる。

 

トランプ大統領の言行に対してのコメントを求められ、

マイクを向けられたアメリカ人達の何人かが、

「アメリカらしくない」

という言い方をしていた。

又そう書かれたプラカードをもつ人々も見る。

アメリカらしさ…

激しいデモやシュプレヒコールをする人々、

新政権に向かって「アメリカらしくない」と訴える反対派の人々は、

建国以来培ってきたアメリカのルールやシステムが通用しないアメリカの誕生、

トランプ大統領のアメリカは自分達のアメリカではないと、

国の存亡の危機の次元で現在を危惧して、叫んでいるのだろうか。

 

今までとこれから、その境目。

アメリカ合衆国という巨大で強大な、実はとても若い国のトランスフォーム、

いよいよ本格的に始まったということなのかもしれない。

それとも一時の右往左往であり、落ち着くべきところにしっかり着地していくのだろうか。

どちらにせよ、その一挙手一投足を世界は巻き込まれながら固唾を飲んで見つめ、

関わり方を模索しながらも、関わり続けていくことになる。

今年はヨーロッパでも同様のうねりが巻き起こる可能性があり、

そうなると従来の慣れ親しんだ欧米世界の形は失われることになっていくのだろう。

 

どの国であってもどの地域であっても、

それぞれの国民の総意に基づく上で平和な形を取ってほしい…

今のアメリカの分裂と混沌が、

今までとこれからという、時代そのものの分け目にならなければ良いのだが。

そうでないことを願うばかりである。

 

 

馨公

フェデラー優勝

膝の怪我のため長期間休んでいたロジャー・フェデラーが、

日曜日に行われた全豪オープンテニス男子シングルス決勝でラファエル・ナダルを破り、

オーストラリアでは自身5度目!となる優勝を果たした。

35歳という年齢での王の帰還とその勝利への道のりは、

史上最高の選手という枕詞にふさわしいクォリティの発露と、その連綿であった。

 

伝説として語り継がれる試合になるのではと、始まる前から大注目となった決勝は、

試合時間3時間38分、フルセットにもつれ込んだ。

フェデラーのしなやかで強靭な高速高精度のテニスと、

ナダルの太いトルクでどこまでも粘り続けられるテニス。

怪我から復活したベテラン2人のテニス史上屈指の力と技、情熱と意地が真っ向からぶつかり合い、

緩みたるみの生じる余地がない、白熱したテニスが終始繰り広げられた。

伝説として語られるべき、胸を打つような内容の激闘だった。


現No. 2のジョコビッチとNo. 1のマレーが先に敗退してしまった稀なる大会。

フェデラーは、No.10ベルディヒは軽々と、No.5錦織は本気のテニスで破り、

セミファイナルでNo.4ワウリンカをギリギリ凌いで、決勝まで上り詰めた。

そして決勝の相手ナダルはNo.6モンフィス、No.3ラオニッチを倒し、

セミファイナルでは覚醒したディミトロフに崖っぷちまで追い込まれながらも勝利した。

 

まさに年下のトップランカー達1人1人をその堂々たる実力でなぎ倒し、

世界が目を輝かせ狂喜した、フェデラーナダルという贅沢なマッチアップは実現したのだ。

そして試合では、ラリーの応酬、諦めないナダル、鋭いウィナーを決め続けるフェデラー

サービスブレイク、ブレイクバックと主導権が2人の間を往き来して、

ついに自己記録を更新する、史上最多のグランドスラム18度目!の優勝を、

フェデラーが成し遂げたのである。

 


情熱的な姿勢と驚異的な粘りで、往年のプレイそのままにフェデラーを苦しめたナダル

セミファイナルで4時間を超える試合をディミトロフと戦った疲れなどまるで見せず、

心身の力強さを溢れさせて、間違いなく本来の調子を取り戻していた。

衰えない躍動感、心身のタフさ、

今年のツアーではすぐに上位に戻ってきそうだ。

 

しかしそのナダルでも、

極端に速い打点から繰り出される多彩なフェデラーのショットには、

やはり対応しきれていなかった。

速いサーフェスでのギリギリの速い仕掛けゆえ、

そしてナダルのフラット系とドライブの打ち分けの妙技ゆえ、

ミスショットも少なくなかったフェデラーではあったが、

結果を見ると、3回戦のベルディヒ戦から決勝まで、

高速高精度のフェデラーのテニスはすべての相手を凌駕し、

結局誰もが攻略しきれずに敗れ去ったのである。

35歳にしてこの進化…一体この最強の王者はどうなっているのか。

低頭するばかりである。

 

ただ仕方がないこととはいえフェデラーファンが観客に多く、

声援にずいぶんと偏りが生じていたため、

試合に対するその影響力は無視できないものがあったと思う。

対戦相手にとって、フェデラー本人と向き合うのでも大変なのに、

さらに大声援を向こうにまわして常にアウェイで戦わねばならないという多大な負担。

フェデラーファンの自分でも、もう少しイーブンな中であったなら結果はどうだっただろうか、

どうなるだろうかと思う場面は度々あった。

そこはひっそりと、言及しておきたい。

 


怪我からの復帰後初のグランドスラムで、

心配をよそに想像以上に素晴らしかったフェデラー

全豪オープンは彼のための大会であったと言っても過言ではないくらいの、

カタルシスさえ感じる優勝という結末で幕を閉じた。

夢のようなフェデラー復活の物語に世界が酔いしれ、

日曜の夜は祝福で満たされていた。

 

けれども冷静にテニスそのものから結果を見るならば、

休み明けであろうとなかろうと、

本命の1人が実力通りにチャンピオンのテニスをして優勝した…

むしろ妥当な結果と捉える方が正しいのかもしれないな…

と、そんな風に思えるほどフェデラーは傑出していた。

 

高齢で怪我明けだからという下馬評を覆しての貫禄の王の勝利…

まだまだBIG4の時代は続くということだろうか。

 


馨公

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ロジャー・フェデラー

日曜日に行われたフェデラー錦織戦は、

フルセットにまでもつれ込む試合となったが、

フェデラーが勝利した。

速いテンポ、卓越した心技体の結晶を見るような素晴らしさだったロジャー・フェデラーのテニス。

やっぱりフェデラーってフェデラーなんだなぁと、

ただただそう納得させられるプレーぶりだった。

本日行われた試合ではズベレフをストレートで下し、準決勝へと駒を進めた。

 

あまりに完成度が高いフェデラーの前では、ウィークポイントも目立ってしまったけれども、

だんだんと押されながらギリギリ耐え続け、

フルセットまで粘った錦織選手の力も半端ではない。

3回戦、世界ランク10位のベルディヒは、

フェデラーの研ぎ澄まされたテニスにまったく対応できず、

残酷なほど軽々と手玉に取られていた。

 

錦織戦でも引き続き力強く華麗なテニスを繰り広げたフェデラー

コースもスピードも申し分のないサーブ、

ストロークのスピード、強弱、その精度や駆け引き、

前後左右への打ち分けと、正確なプレースメント、

そして打点を自在に操りテンポを変え、相手の動きから試合そのものまでを支配してしまう掌握術。

引き出しの数、使えるツールの数、幅、懐の深さ、分厚さ…

 

後半には疲れなのかややミスショットも出ていたが、

特に2、3セットは圧巻の内容で観客を魅了していた。

こんなプレーをされて勝てる選手など実際いるのだろうか?

これで本当に35歳なのか?

このあとも疲労や怪我トラブルがなければ、疑念をはさむ者がいないような優勝大本命ではないかと、

そう思えるクォリティだった。

 

フェデラーが優勢の中にも錦織選手が見事に切り返してその実力を見せれば、

またフェデラーがそのお返しをする。

緊迫した空気の中、1ポイントを交互に取り合うたびに、

会場では賞賛と驚き、感銘の溜め息が混じり合う歓声と拍手が巻き起こった。

2人のテニスは宝石のような、芸術のような、とてつもない一球一打の連続だった。

 


識者やファンだけではなく、マレーやフェデラーを含めたトップ選手たちが、

錦織圭は非常に俊敏なフットワークをもつトップ選手の1人であり、

特に今世界のベストレベルのショットメイカーだと公言している。

そんな錦織選手でも太刀打ちできない速さの精確なショットをフェデラーは打ち込み続け、

その中の実に83本ものショットがウィナーとなった。

ちなみに次戦のズベレフ戦では、60本以上のウィナーを3セット1時間32分の間に決めている。

 

錦織選手が放ったエンドラインギリギリの強烈な打球も、

フェデラーはハーフバウンド気味にことごとく拾い、叩き返し、

それがまた錦織側サイドライン、エンドラインギリギリのところへことごとく決まっていく。

ほとんどマジックのようなストロークは、ほぼ最後まで変わらず保たれた。

 

どんな選手にとってもラリーどころかまずリターンが可能なのかと思うような、

目を瞠るような高速・高精度のテニス。

むしろ足も速くベストリターナーの1人である錦織選手だから、

ギリギリ届いて打ち返し何とかラリーにできていた、と考える方が理に適う。

マレーやジョコビッチ等を除く、他のほとんどの選手では、

まずラケットがボールに届きもしないのではないか。

まさしく異次元レベルのストロークぶりだった。

 


そのフェデラーに対して錦織選手はすごいな…

と感じたシーンが実に何度もあったが、

全力のフェデラーに押され続けながら2-2のタイに持ち込み、

ギリギリのところでフェデラーを受け止めていたその器に驚かされてしまった。

ウィナーも40本以上決めている。

5セット目はサービスを先にフェデラーがブレイクしたため、

実際にはそこで試合が決してしまった感がありはしたものの、

最後まで何とか食い下がっていた。

あの観客の応援に後押しされた、あの出来のフェデラーにそんなことができる選手が果たして何人いるだろうか。

個人的には、フェデラーが凄すぎる分だけ、

錦織圭という選手の今の凄さ強さもよく分かり、

それが心に刻み込まれた試合となった。

 

そして同時に、全力のフェデラーによって、

2人の差がどこにあるか、どう違うのかが、

見えて浮かび上がってしまった試合だったようにも思う。

ウィークポイントがよりクリアに露呈された格好と言えるだろうか。

自他共に認めるようにサーブの弱さが、このような高次元の試合だとどうしても悪目立ちし、

フェデラーに何度もセカンドサーブを打ち込まれエースを取られていた。

スピードというよりむしろ精度、入る確率が低く、

入れるべき時に入らない両者の違いが如実に出てしまっていたのが残念だった。

また本人も言う通り、メンタル面の優しさのことがよく取りざたされるが、

この試合序盤でも、明らかにゲームの主導権を掴んでいるそのグリップを、

自ら緩めてしまうような部分が見られたと思う。

 


フェデラーがしかけて押し、錦織選手が受けて凌ぐ構図に次第になっていった試合は、

トップ同士が四つに組んでぶつかり合う、濃密でヒリヒリするような戦いだった。

王者でありながら挑戦者のように、

フェデラーは戦術戦略準備万端で、錦織選手との試合に勝つために全力で臨んでいた。

このようにフェデラーが本気モードで、錦織選手を負かそうと全力を尽くす姿は初めて観たような気がした。

そして勝利が決まった瞬間のフェデラーの飛び上がって喜ぶ姿、

あんな感情もあらわな姿も初めて観たように思う。

そのことが今の錦織圭のレベルを何より証明しているということなのだろう。

観ていて何とも言えない気持ちにさせられた場面だった。

 

こうなると、もう王者フェデラーの優勝するところが観たい。

ゴフィンとディミトロフの勝者が決勝に出てくることはあるだろうか

ワウリンカのバックハンドとパワー、そして勝利への執念。

けれど彼のフットワークで今のフェデラーの速さについて行けるのか。

サーブとネットプレーにフォアハンドも武器にしたラオニッチが立ちはだかるのだろうか?

それともここにきてまさかフェデラーvsナダル

実現されてしまうのか。

そんなことになったら世界中が嬉しさのあまり、

試合前から涙を流してしまうはずだ。

やっぱりテニスは素晴らしい。

準決勝が近づいてきた。

 


馨公(よしたか)

錦織圭 vs ロジャー・フェデラー

真夏の南半球オーストラリアで開催されている全豪オープンテニス。

幕を開けてから約1週間が経ち、トーナメントも4回戦まで進んでいる。

ジョコビッチが2回戦で敗れるというビッグニュースに驚かされたり、何人かのシード選手が早くに去りはしたものの、

ここまで勝ち残っている顔ぶれを見ると、

やはり馴染みの上位ランカー達という状況になっている。

 

今回のトーナメント、錦織選手は厳しい山に割り当てられたけれど、

3回戦まではさすが、キッチリと勝利。

このあとの4回戦でロジャー・フェデラーと。

勝ち上がれた場合、ベスト8ではランキングNo.1のアンディマレーと、

対戦することになりそうだ。

ここからが正念場、厳しさが格段に増す。

 

観る側としては、こうした華やかなラインナップ自体には胸躍らされるが、

とりわけフェデラーvs錦織戦はまさに夢のような好カード、

この2人のマッチアップが観られるときめくような歓びや、とうとう現実となる感動と、

4回戦ではもったいな過ぎるぞォ、と感じる気持ちとがせめぎ合い、

心の中で嬉しい悲鳴が上がっている。

 

フェデラーと錦織の関係性には、

どこか師弟のような、尊敬し認め合う姿が透けて見え、

他の選手同士の試合では見られない何か純粋な「通うもの」が感じ取れる。

そんな2人のフェアな精神に則って繰り広げられる高度なテニスは、

美しくて力強く、速くて正確であり、

その力と技とスピードが、

4回戦で観る側を楽しませてくれるというのだから誠に贅沢なことである。

 

それぞれの選手だけを見ても、

あのロジャー・フェデラーの久しぶりの復活劇、

その姿、そのテニスを観られるだけでもファンにとっては感激だ。

一方キレのあるストロークにさらに磨きがかかって、

錦織選手悲願のグランドスラム優勝への応援と期待も膨らむ。

どちらにも勝って欲しいし負けて欲しくない気持ち。

数多くのテニスファンがこの4回戦を前に、

同じ気持ちでワクワクハラハラしていることだろうと思う。

 

いよいよ本日の日本時間17時頃から試合が始まる。

グランドスラムではどうしてだか対戦がないこの2人、

楽しみな思いが強くて、昨日から何となくずっとソワソワしている。

 


広いコートを激しく動き回りボールをしたたかに強打し続けていても、

力みなく滑らかで華麗、静かでフワリと軽やかなフェデラーの無駄のない動き。

ゆったりしたフォームから、鞭がしなるような強烈なフォアハンド、

蝶や風が舞うような柔らかなステップから、緩急自在のとてつもないボレーを決めてしまう。

しなやかで強力、美しい芸術のようなテニスで魅せる史上最高のプレイヤー。

 

錦織選手の目の覚めるような鋭角のフォアドライブ。

他の追随を許さないバックのダウンザライン。

バネの効いた俊敏なフットワーク。

ピンポイントで打ち込まれる軸の定まったキレキレのリターン。

まるで高速で回転する幾つかの独楽がぶつかって弾け飛び、火花がその瞬間に四方に飛び散るように、

あらゆる角度へ自在に放つことができる、煌びやかなショットメイク。

 

勝負以前に、

精度の高いストロークやラリー、ボレーや戦術、動きすべて。

こんな2人の戦いが観られるというだけで、

本当に心から幸せで、顔が自然に紅潮してきてしまう。

どちらも応援したくなる。

 

けれど日本人として…というか東洋系の選手として、

このスケール、このグレードで戦い活躍している選手はほぼ皆無、

錦織選手1人だけが成し遂げているというこの現在の状況。

肉体面、心理面、人種面、環境面など、

目に見えるところ見えないところひっくるめて、

想像以上に戦って、また闘ってきているのだろうとも思えてくる。

 

コート内外のシビアな側面としのぎを削りながらも、

ここまで継続して世界のトップメンバーとして実績を作り、

グランドスラムを錦織選手が取ってももう全くおかしくないと、

もはや世界のメディアや識者が普通に言うようになってきている今。

当然…と皆が思うところにはたどり着いているその現実が、

追い風のように彼を後押しし、

今年は「実力通り」のこととして、本人悲願のグランドスラムを獲得して欲しい。

 

フェデラーには負けて欲しくない。

でももう錦織選手に勝って欲しい。

あぁ、これが決勝であったなら…。

 


馨公(よしたか)