虹の書斎

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雨の夜と虫の声


シャンパシャンとベランダや外壁を打ち付ける雨粒の音が、また少し強まった。

しっかりとした降雨。

ランダムな雑音具合が気分を穏やかに鈍く沈めて、

窓を開けると、雨の匂いとひんやりした高い湿度の外気が入ってきた。

あまりにも暑くて、厳しい晴れが続くばかりというのは勘弁して欲しいけれど、

8月の半ばを越えても、ずっとこんな涼しめの陽気のままで、

ここまで夏らしくない雨続きというのも何だか異様に思える。

今月晴れた日はあったかな…その記憶がない。

 

リン…リン…リン…リン…リン…

どこかで優しい虫の声がしている。

やや肌寒い日が続いているし、もう気分は秋の風情だな…

などと、少し心がポヨンとしていたら、

曖昧な視線の先に、部屋の壁を歩く虫の姿が。

小さいけど意外に早く動く、イヤだのぉ…

何かなと思っていると、

その虫から美しい音が響いてきた。

 

歩いたり止まったりしているその虫の方へと近づいて、よくよく姿を見てみると、

小さなコオロギっぽい。

でも音がコオロギよりも優しいし間隔が違っている。

何々コオロギみたいな亜種なのかな…

小さくてキレイな音がリン…リン…リン…

その途端にカワイイなぁと心変わりするのだから、

我ながらゲンキンなものだ。

 

細やかな音の振動が心の芯に届くように癒し、

深いところからホッと安堵感が生まれて、ため息をつく。

どうして虫の声はこんな風に深くなだめてくれるのだろうか。

優しい…落ち着くなぁ…と気持ちのいい静かな時間。

外の夜の雨の鎮静する気と相まって、

なんとも安らかで、ヒンヤリと夏らしくない終戦記念日の夜。

お盆でこちら側に来ているご先祖さん達も、

しばし虫の声に聴き入ったりしているのかな。

 

 

馨公

夏模様


8月に入った初日から関東はゲリラ豪雨に見舞われ、

その後も、曇りと雨と晴れが1日の中に混在するような、

何ともすっきりしない空模様の日が続いた。

 

南海上で勢力を増した台風5号が、九州を横目に四国沖から関西へ上陸、

このまま日本を縦断するらしい。

空が幾つものグレー系に層をなして、疾い。

 

 

目線の先を空から地上の遠景へ下ろすと、

あちこちの木々の緑が本格的に濃く厚く繁茂していて、強まる風に揺れている。

濃緑に心染められる。

 

一面に広がる草緑色の、絨毯のように美しい稲の原に、

サァーと風が渡るたびに、

田圃全体にザザザと波が立ち、遠くまで柔らかにうねりゆく。

 

深緑色、常磐色、草色、萌黄色…

様々なグリーンが目白押しに共演する夏ならではの宴だ。

曖昧な空を置き去りにして、盛大に栄えている自然にひととき感嘆する。

 

 

少しゆっくりめに散策モードで歩きながら、

視線を近くへ、周囲へと戻して辺りをうかがうと、

普段は見落としている色や形、種類が目前に浮かび上がってくる。

 

ヤブカンゾウオニユリが、草の緑の中にオレンジ色を添えていたり、

黄色やマジェンタのオシロイバナの鮮やかな花が、

緑と空と、一瞬の強の日差しに映えていたり。

 

百日紅(サルスベリ)、凌霄花(ノウゼンカズラ)、向日葵(ヒマワリ)、芙蓉(フヨウ)、槿(ムクゲ)…

夏の花達のカラフルな色彩パレット。

白い花のそのクッキリとした白さが気持ち良い。

 

 

柿の木を見ると、

緑色の小さな柿がもうたわわに実っているが、

秋に向けて少しずつ大きくなる過程の、まだまだ序の段という風情。

 

梨の木にもたくさんの実がなっていて、こちらはもうテニスボール大の大きさ。

十分機は熟している感じがするのだが、

早く収穫しなくて大丈夫なのだろうか。

 

栗の実も形はすっかり出来上がり、あとは熟成を待つばかりといった様子。

まるで葉の上にボールがくっついているみたいに、

黄緑色のイガイガの実がたくさんなっている。

 

 

葉と花と実が渾然一体となって、

夏の季節の一幕を、風景の中に表現している。

己れの生命をじっくりと生きて、成熟へと向かっている。

 

秋の下地がこしらえられていく、もう1つの夏模様。

スムーズな移行を着々と進めて、自然界には抜かりがないようだ。

高らかなセミの鳴き声の世界…雨がいよいよ落ちてきた。

 

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馨公

今どきの夏

 

向かって右側だけが見える上弦の月が、南西の空に浮かんでいる。

7月も末日を迎え、明日からは8月。

雨の降らない梅雨らしくない梅雨が明けてからの方が、

むしろ曇りや雨模様の日が多かった気がするけれど、

今日は久しぶりに、真夏の太陽が遮るものなく照りつけていた。

アツイアツイ。

 

 

梅雨の時期から夏晴れが多く、熱気に煽られる日が続いていたせいか、

雨降りの体感が今年は少なすぎて、

どうも心理的・気分的に水が足りていない感じ…

何となく苦しい。

 

高い湿度にぶつくさ言いながらも、梅雨の豊富な水気を受けて心身が一息つく…

そんな例年の流れがないまま夏に突入してしまい、

波に乗れず、でも波に引きずられて進むようなぎこちない感覚がある。

早めにバランスというかリズムを整えていかないと、

後々、夏が終わりに近づく頃あたりになってから、

身体にじわじわ堪えてきそうだ。

 

 

もはや夏の普通の光景となってしまったゲリラ豪雨が、

今年も激しく、ピンポイントで都市部を攻め立てている。

九州や東北地方には、

土地の基盤そのものを揺るがすような、

防ぎようのない膨大な豪雨が局地的に降り続き、

あまりにも酷い被害をもたらした。

 

一方で、雨が降らず関東のダムの貯水量は減り続け、

取水制限が開始されていたり、

梅雨が明けてからの方が、若干だが気温的には過ごしやすい日があったりもする。

満遍なく均質に中程度。自然な流れ。

そんな慣れ親しんだ天候のあり方が形をとらなくなり、

新しくより厳しい型が出来上がり始めているかのようだ。

 

夏ならではの灼熱の太陽と青空、強列な陽射しと湿度と熱気…

そして突然の異常な雷雨と雹、

道は即席の急流の川となり、街の至る所で冠水が発生する。

従来の夏に温暖化がもたらす極端さが加わった今どきの夏は、

これからも年毎に、激しさを増すばかりなのだろうか。

 

 

これ以上の酷暑にスーツ着用ではあまりに危険すぎるので、

近い将来、着用禁止条例が制定されるかもしれない。

…というか、今すぐでもいいくらいに早くそうなったらよいと思う。

就活中の学生さんや外回りの営業さんたちのスーツ姿、

真っ赤になった顔を見ると、

今もうすでに、危険ではないか?大丈夫か?と、

心配になってしまうほどだから。

 

 

馨公

ウィンブルドンはフェデラー優勝


ウィンブルドン、男子シングルス決勝。

 

大会を通じて1セットも落とすことなく勝利してきた、老練の芝の王者ロジャー・フェデラーと、

錦織圭選手に勝利したあの全米以来、久々の四大大会の決勝進出であり、

ウィンブルドンにおいては初めて決勝まで勝ち上がったマリン・チリッチ

タイプは異なるけれども、ともに高いサーブ力を誇る2人、

サービスキープが連なる展開になるのだろうか?

第3シードと第7シードによる決勝となった。

 

 

どちらの選手も序盤は緊張していたようで、

40-40にもつれ込む展開の中にどこかぎこちなさがうかがえ、フォルトも多かったが、

チリッチはフォアハンドのショットが効いていて、

ややフェデラーの方が押し込まれていた。

それでも双方サービスキープをしていくと、

時間とともに試合が落ち着き始めた。

 

ただサーブの名手チリッチのファーストの入りがひどく悪い、緊張のためなのか?

徐々にリズムが整ってきたフェデラーの精度が、いつものように高まっていく。

チリッチが苦手とするバック側へ返球を集め、

最後フォアへと早い打点から打ち込むパターンがはまり出す。

フェデラーのなめらかな動き。

サーブが依然として入らないチリッチ。

フェデラーはチリッチの心の中を読みきっているかのように、自在にテニスを展開し始め、

徐々にチリッチはミスが重なり始め、

表情が泣き顔のように悲痛になっていく。

 

 

2セット目の3ゲームが終了した後のベンチ、

タオルをかぶり涙を流しているチリッチ。

椅子から立ち上がれない。

何が起こったのだろうか?

その後3セット目に入る際にメディカルタイムアウトを取って、

左足裏の豆に対する処置を施すところが映し出されていたが、

その痛みのせいの涙だったのか…?

  

サーブが入らない。思い通りにいかずミスが重なる。

フェデラーはエンジンがかかり出し、いつものように自由自在になってきている。

どうしよう、何とかしなくては…という焦り。

チリッチほどの選手でも、

ウィンブルドンの決勝の舞台となるとこれほど追い込まれるものなのかと、

観ていて感じられるほど、1セット目の終盤あたりからはいっぱいいっぱいな感じで、

泣きそうな表情をしているようにさえ見えた。

 

最後ダブルフォルトで第1セットを失った後、ベンチにラケットを叩きつけ、

うな垂れるように座ったチリッチ。

そして2セット目、いきなり3ゲームを連取された後に、

あのタオル越しに嗚咽するほど涙する姿へと至った。

ウィンブルドン決勝への意気込みと自身のプレーがうまくかみ合わず、

精神的にあまりに追い込まれてしまって心が溢れてしまったのだろうかと、

個人的に、その時までの試合の流れの印象とともに、そのようにチリッチの涙を受け止めていた。

 

実際のところ、チリッチはそれまでの試合中、

足を痛めているようなそぶりは見せなかったと思うが、

豆の痛みを抱えながらの、そのような流れだったのだとしたら、

痛みのせいでうまく左足に重心がかけられない、体重を乗せられない苦しさや、

決勝の舞台で力がうまく出せない辛さなどがない交ぜとなって、

あの必死の形相を生み、

そしてこらえきれない思いが涙となって溢れてしまったのかもしれない。

サーブが不自然なほど入らなかったのも、足の痛みと無関係ではなかったのだろう。

 

 

フェデラーの心の中は推し量れないが、

表向きは何も変わらずに自分のペースを貫き、

2セット目も6−1で連取した。

チリッチは自分を鼓舞し、何とか気力を振り絞り、

果敢にネットに出て、フェデラーに挑んでいた。

3セット目になると、

観衆もずいぶんとチリッチを応援する声が増していたようだ。

 

しかし、ここぞというところで、

流れに関係なくベストのサーブとショットを繰り出し、

たった1打で局面を決定させるフェデラー

最後まで、チリッチに主導権を譲ることはなかった。

結果は6-3,6-1,6-4のストレートでフェデラー勝利し、

大会を通じて1セットも落とすことなく、

男子シングルスにおける、ウィンブルドン歴代単独トップとなる、

8度目の優勝を果たした。

 


芸術作品のように美しく、しなやかに舞踊するかのように軽やかなフォーム。

 

ギクシャクと角張ったところがまるでない、流麗かつスムーズな動きとそのつながり。

 

極めて早い打点からどこにでも打ち分けられる、緩急強弱前後左右自在のショットメイク。

 

どの局面からでも瞬時に仕掛けられる世界最高レベルのネットプレー。

 

試合の流れに左右されることなく、異常に高い精度でピンポイントに決められるサーブ。

 

対戦相手の目論見を読み解き、また相手からの読みには未然に察知してかわしていく洞察力。

 

ほとんどオールマイティと言えるほどの数多い手札を、適材適所で使いこなす判断力と自在性。

 

窮地に見える場面でも決して破綻しないテニスと、破綻させない強靭で堅固な勝者の精神力…

 

体力やスタミナの点では、絶対的に若手選手には敵わないところを、

豊かな経験や智慧を支えにして揺るぎないメンタリティと、

サーブ、ストローク、ボレー、ロブ…高性能で多彩な武器を駆使することで、

フェデラーは高い年齢ゆえの弱点を帳消しにし、

さらに補って余りあるものへと見事に昇華させていた。

正直なところ、芝のフェデラーはまるで仙人や魔術師のよう…

自在の境地にいて、1人だけ明らかに次元が違っていた。

 


昨年のウィンブルドン準決勝で、

ラオニッチと戦った際にコート上で倒れ込んだフェデラーの姿。

その試合に敗れた後、ツアーから離れることになった。

史上最高とも言われるプレーを、再びコート上でみることはできるのか?

そもそも復活自体、可能なのだろうか?

期待感と不安、諦めの混ざった寂しさのようなものを感じながらも、

とにかく健康が戻るようにと願っていた。

 

年初のオーストラリアの衝撃の復活や、

インディアンウェルズ、マイアミと立て続けに優勝を果たして世界を驚かせ、

歓喜をもたらして。

クレーシーズンを休んだ後、芝の前哨戦のハレでも優勝し、

そしてまさか、このような磐石な形で、

ウィンブルドンのシングルス決勝センターコートに戻ってきてくれるとは、

昨年の今頃からは、正直かけらも想像できなかった。

 

 

今回のウィンブルドンの期間中ずっと、

フェデラーのプレーを観られる喜びをヒシヒシと感じ、

ほとんど感謝の気持ちさえ抱いて、試合を観ていた。

不思議なほど勝負そのものへのこだわりも湧いてこないまま、

ただただずっと、夢のように素晴らしい芝の王者のテニスを、

ひたすらかみしめながら観戦した。

観戦させて頂いた…の方が気持ち的には近いくらいだったかもしれない。

 

まもなく36歳を迎える、偉大なるテニスプレイヤー、ロジャー・フェデラー

ウィンブルドン8度目!となる優勝への祝福と、たゆまぬ努力への敬意と、

そして崇高なアートのような唯一無二のテニスをまたこうして見せてくれたことへの感謝を、

心から、捧げたい。

 

 

馨公

虹の便り

 

「わっ、にじだ!」

「これは見事だなぁ〜…」

 

東南の空に、結構クッキリと現れた虹。

綺麗な七色姿をひとり見上げていたら、

路肩に車が停まり、老夫婦がおもむろに出てこられた。

 

「あぁ、いいね」

「素敵ねぇ…」

 

この時期になると、

夕刻、東から東南の空にちょくちょく虹が出てくれる。

梅雨明けが近いのかな。

 

悲しいこととか、辛いこと…

心無い言動や、報われぬ理不尽…

日々、いろいろあるけれど。

 

束の間、天来の虹の便り。

 

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馨公

ウィンブルドン、セカンドウィーク

 

3回戦が終了して、ベスト16の顔ぶれが出揃ったテニスのウィンブルドン

1日お休みを挟んで、セカンドウィークがスタートした。

頂上へと駆けのぼるべく全選手がギアを上げ、

ここからは、より本気度を増した戦いが繰り広げられていく。

観ているこちら側にも、

他の大会とは異なる独特の緊張感と高揚をもたらすのもウィンブルドンならでは。

毎年変わらないのが、心地よい。

 

ただそんな中、

今年は芝のコンディションが例年に比べてひどく滑りやすいらしく、

怪我やトラブルが起こりそうで危ないと、

選手達から懸念する声があがっている。

女子ではひどく怪我を被ってしまった選手も出たりしているし、

プレー中に逆を突かれた際に滑って転倒する選手が、

露骨に多発しているのも気になる。

フェデラージョコビッチも、例年と比べて芝の状態が良くないことを挙げており、

気温が高く晴れが続いているせいで、このような事態が起きているのではと、

運営側からの見解も出されてはいるようだ。

 

そして同時に、バウンドしたボールの跳ね方がイレギュラーで、

例年の準決勝決勝あたりで見られるようなバンピーさだなと、

観ていて感じられる場面が、ファーストウィークにもかかわらず度々あった。

芝がこそぎ取られているだけでなく、

むき出しの地面も凸凹がかなり激しくなってきているのだろうが、

この時点ですでにその問題点が顕著になっていて、

果たして今後のコートサーフェスは大丈夫なのだろうか…

と不安もよぎる。

芝が荒れてバウンドが変わるというコートの状態が、

勝負の綾となり得るような芝ならではの性質には面白さもあるにはあるのだが、

とにかく各選手が怪我することなく、

プレーし続けられることを望むばかりである。

 

 

ベスト8進出をかけて行われた男子の試合。

個人的に全ての試合の観戦は叶わなかったのだが、

それぞれの選手が明らかにセカンドウィークの態勢にシフトチェンジしているようで、

ワクワクが募る。

それにしても、ナダルミュラーの5セット目、

「13–15」という結果をニュースで読んだ際には2度見してしまった。

観戦できた人にとっては、

心の財産になるような、記憶に残るような試合になったことだろう。

羨ましい限りである。

 

しかし、それほどの本気の戦いっぷりには、

観ていなくとも、戦慄と感動を覚えるものがある。

やっぱりウィンブルドンセカンドウィークなのだ。

そして5時間近くを戦い抜き、

実質的には6セット分プレーし続けたナダルと、

ナダル相手にそれほどの試合を制したミュラーには、

ただただ賞賛と低頭の気持ちを抱くばかりである。

ベテラン達の面目躍如、

ぶつかり合う闘志とテニスへの献身が本当に素晴らしい。

 

男子は4回戦(ベスト16)で行われた8試合のうち、

4試合がフルセットにもつれ込んでいる。

マレー、フェデラー、ラオニッチ、チリッチ、ベルディヒミュラー、クエリー。

全体にサービス力があり、芝を得意とする選手が、

結果としてやはり残っていると言えそうだ。

クレーを得意とする選手と、クレーならではのプレーの特色があるように、

勝ち上がった選手を見ると、

芝で勝つための条件と、

芝で戦うことの難儀さを教えてくれていると思う。

延期となっていたジョコビッチ対マナリノ戦ではジョコビッチ勝利し、

これでベスト8の選手が確定した。

 

 

このベスト16のメンバーの中に錦織選手がいないことは、

ただただ残念である。

3回戦の相手であったスペインのアグットは、

特にフラット気味のフォアハンドの威力とプレースメントが素晴らしかった。

落ち着いた精神状態で、じっくりと錦織選手に向き合って為したテニスには破綻がなく、

あれだけミスがないと、つけいる隙も生まれにくい。

センターへの返球を軸とする錦織選手攻略のパターンがしっかりと発揮されていて、

錦織選手が徐々に術がなくなり、

追い込まれていく展開になったように見えた。

 

ミスがあまりに多く、大事なポイントで集中力が途切れ、疲労度も深刻そう…など、

錦織選手のコート内外の要素を鑑みての厳しい評価も数多く存在しているようで、

確かに昨年の夏あたりまでのプレーと比べると、

キレが鈍いと感じる部分はあるけれども、

むしろ本当のところ、怪我は大丈夫なのか…

本当に良くなっているのかの方が気になる。

今後は得意とするハードコートでの戦いが待っているので、

そこでのプレーに注視しつつ、引き続き応援していきたい。

 

 

ところで、女子の方は1日早く、ベスト4が確定した。

地元イギリスのジョアンナ・コンタが残ったので現地は大喜びのようだが、

セミファイナルはビーナス・ウィリアムス。

地元の利を生かしてもなお、勝つのは大変そうな相手だが、

果たしてどうなるだろうか。

会場全体がコンタの勝利を喜ぶ中に、

往年の女子の大選手、バージニア・ウェードの姿が映し出されていた。

高速のサービスとワイルドな鋭さがかっこよかった女子選手で、

個人的には初めて好きになったプロテニスプレイヤーがウェードなので、

素敵な佇まいで笑顔を見せている姿には、誠に感慨深いものがあった。

 

コンチータ・マルチネスがスペインのムグルサのコーチをしていたり、

アガシジョコビッチのテンポラリーのコーチを引き受けていたり、

ちょっと前にはエドベリ、ベッカーもいたし、

現在進行形ではレンドルやマイケルチャンもそうだ。

男子も女子も、すっかりコーチ陣の方に、より馴染み深い顔を見ることが多くなった。

 

さて、ここまでくると、

どの試合も全て見逃せない見逃したくない試合ばかりとなるが、

男子の方は、ベスト4には誰が残ってくるのかな?

 


馨公

ゲリー・ウェバーOPはフェデラー優勝

 

湿度の高さは厳しくとも、

一年の今ここだけに現れる、しっとりと梅雨らしい光景を楽しむこともできる6月。

色彩豊かな紫陽花が見頃を迎え、

立ち寄った大型商業施設には、すでに七夕用の笹が飾られていた。

しかし日本を離れ世界を見てみれば、

南米やオーストラリアの人達にとっての6月から7月は冬の最中であり、

北欧の人々には貴重な日差しが得られるシーズンなのだろうから、

ひと口に6月とは言っても、顔かたちは誠に様々だ。

 

テニスの世界へと話を飛ばしてみると、

ATPツアーにおけるこの時期は、

全仏…芝シーズンの到来…ウィンブルドンの開幕…

というスケジュールが割り当てられている。

厳密には、全仏が5月末から6月中旬にかけて。

芝の各大会が6月中旬から後半に執り行われ、

全英が7月頭からスタートする。

つまり、2つのGSが開催されるこの6月から7月前半は、

1年の中での中盤戦のピーク、

テニスファンにとって垂涎の時期だと言えそうだ。

 

 

そんな中、ウィンブルドンの前哨戦となる芝のATP500の大会、

ゲリー・ウェバー・オープンとAEGON選手権の決勝戦が日曜日に行われた。

錦織選手が3年連続で棄権したことが話題となったゲリー・ウェバーOP(ハレ)だが、

こちらはロジャー・フェデラーが優勝。

AEGONでは、フェリシアーノ・ロペスがチリッチを激闘の末に破り優勝を決め、

共に35歳という大ベテランが勝利して幕を閉じた。

 

休み明けの復帰第一戦となったメルセデス・カップの初戦。

フェデラーはトミー・ハースに敗れ、

その結果には驚かされもしたが…

というかここでもハースとフェデラーの年齢がすごいのだが(笑)、

このハレに於いては、

ホームで決勝進出を果たしていたアレクサンダー・ズベレフ(弟)を相手に、

6-1,6-3のストレート…

もう少し拮抗するものと予想していたのだけれど、

わずか53分で下し、

本大会9度目!の優勝を果たしている。

 

 

今年のクレーシーズン前までと同様の、

軽やかな動きから繰り出される高精度の神速ストロークやドロップショット。

そこに、芸術的なネットプレーをより多めにブレンドイン。

ため息が出るような多彩な自在性、

しなやかな華麗さはそのままに、

芝ならではのテンポとプレースタイルを加味して、

決定的なシーンを実に「簡単そう」に創出していたフェデラー

芝の王者らしい見事なテニスを見せてくれていた。

 

185cmもある体躯を忘れさせてしまう、

蝶がフワリフワリと音も出さずに舞うような、

体重を感じさせない独特のフットワーク。

 

どこを切り取ってもエレガンスが感じられる、

一貫して美しい力みのないフォームから、

無駄がなくクレバーに、正確かつ素早く展開されるテニス。

 

ゲリー・ウェバー・オープンでのプレーを見る限り、

動きが良く、身体もキレがあって、

休息とトレーニングが非常にうまくなされているのだなという印象を自然と受けた。

芝のコートにおけるパフォーマンスは依然として超一級であり、

しっかり準備も万端整っているなと、

おそらく世界中の観戦者が確認したのではないだろうか。

 


ただ、35…8月には36歳となるフェデラー

年齢からくるスタミナの問題やアクシデントは、

常に懸念されるところであり、

また、ツアー参加の割り振りも例年とはかなり異なるので、

それがどう影響するのか等、気になるところもある。

 

そして何と言っても、

クレーシーズンに異様な強さを見せつけた赤土の王者ナダル

生涯グランドスラムを目指すワウリンカ、

復活をここから目指したいグランドスラマーのジョコビッチに、

昨年の全英覇者でありUKをホームとするマレー…

ラオニッチもティームも、チリッチも錦織圭もAズベレフも。

ほぼすべての上位選手が結集する、長丁場の全英だ。

 

ウィンブルドンでまたフェデラーを観ることができるだけでも、

相当に幸せなのだが、

できるだけ…という気持ちもやっぱり募る。

長年観る者を倦むことなく陶酔させるフェデラーのテニス。

果たしてどうなるだろうか?

7月3日から、いよいよスタートする。

 


馨公

夕焼け


夕日が雲を焼いて空が燃え盛り、

本当に火の海のようになっていた。

その茜色からゴールドオレンジの世界には、

まるで炎の龍の乱舞とでもいうような迫真の狂おしさや、

押し寄せるマグマの奔流のような、身のすくむような凄みがあって。

その日最後の太陽が、

己れ自身を語り尽くそうとしているかのようだった。

 

息を呑むような壮大なスケールの、

黄金に輝き満ちる壮絶な空を背にして、

鳥達が黒いシルエットとなって渡っていく。

銅鑼のドーンという音が空の奥の方から轟いてきそうな、

何か神々しさと恐ろしさが生々しく立ち現れた、

そんな夕焼けだった。

 

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馨公